キュレーターおすすめの鑑賞法&アート作品解説

 

最後に、キュレーターのお2人と会場を巡りながら、今回のおススメの鑑賞方法と、展示されているアート作品についてそれぞれお話をお聞きしました。

 

Q.今回のアート作品展示のおススメの鑑賞方法は?

&田坂作品が点在しているため、ゆったりと楽しむために2日間に分けて鑑賞することをおすすめします!
例えば、1日目は、主要な作品が集中している中野・大和田エリアを中心に巡り、織物産業の歴史と現代アートの交わりに触れる。
2日目は、石川東公園のある石川エリアや小宮公園エリアなどの屋外展示を鑑賞。
会場間の移動はエリアによりますが、レンタサイクルも利用できます。あえて歩きながら街の風景や人々の営みを観察したり、地元のお店で休憩をとったりと、「すべて含めて」楽しむことで、作品の背景にある物語がより立体的に見えてくるのではないでしょうか。

TATTA

『Time Machine to Silk Era』

『Buttress』

『八王子六地蔵ウォークラリー』

織物工場跡(メイン会場)、第九小学校前、中野上町 小道
第九小学校前
『Buttress』
織物工場跡
『Time Machine to Silk Era』
中野上町 小道
『八王子六地蔵ウォークラリー』
絹の町・八王子の発祥の地とも言える片倉製糸場の建物で、近年まで日本機械工業の量として使われていた木造建築が解体され、その建物の木材を再利用してメイン会場に小さなフォリー(装飾物)を制作。また、この物件では、複数回のワークショップを行い、家の解体から木材加工、ロープ補強など多くの時間を市民の皆さんと過ごしたことが思い出深いです。ベンチやカウンターもあるのでゆっくり時間を過ごしながら、建物と木材の魅力に触れていただきたいです。さらに、同じ古材を利用して小さな地蔵を子どもたちとデザインし、街中に点在させています。中野地域には車も入れないような小道がたくさんあり、ちょっと不思議な小道に6体の地蔵を点在させ、ウォークラリー形式でこのまちを見つめる企画も!ぜひ街歩きを楽しみながら、回ってほしいですね。

 


平塚 響『縫偶獣ハチオウゲン』

会場:織物工場跡(メイン会場)
牛頭天王・八王子権現の信仰や桑都・布の町としての歴史、山々の自然、平塚さん自身が学生時代に過ごした記憶など、多様な表情を持つ八王子。その断片を古着や古布をつぎはきして生まれたぬいくるみ状の大型キグルミを中心に、素材や街、そして個人に刻まれた記憶や時間を辿る空間インスタレーションです。今にも動き出しそうなキグルミには、それぞれのファブリック自体の思い出も含まれており、様々な場所と時間が素材を通してつながっています。また、本制作のミシンの機械音をサンプリングして作られた、Shogo Mochizukiさんによる環境音楽にも是非耳を澄ませながら、作品をいろんな角度でみていただきたいです。

 


Re Arts Garden『八王子市内に眠る画材と作家の発掘及びアーカイブ』

会場:織物工場跡(メイン会場)
田坂:中古画材専門店のRe Arts garden(リアーツガーデン)は、さまざまな理由で不要に品となった画材や作品を引き取り、必要としている次の世代へと受け継いでいく活動を行っています。本展示は、八王子に眠る美術家たちの作品を展示することで、消えゆく時代に新たな光を当てる試みです。今回は八王子で戦前から戦後に活動し日本の美術の歴史を支えてきた方々の作品が100点以上集まりました。会期後に全作品を一部抽選で無償譲渡いたしますので、気になる作品がありましたらぜひメイン会場にてご応募ください。

 


加藤真史『八王子ヴェセル – 聚合と伏流、八王子という盆地の舟 -』

会場:染物工場跡(メイン会場)
田坂養蚕の神「金色姫」を主人公に、養蚕信仰という視点から養蚕の歴史と今を作者の加藤氏の解釈とともに物語形式でひも解いていく試みです。東の海から常陸に漂着した金色姫は蚕や生糸となって関東平野の桑海を渡り、「桑都」八王子に集まり、「絹の道」に沿って横浜へと辿り着き、再び海へと還っていく…このストーリーは今回お声がけする前から数年かけて筑波や八王子、相模原の近代以降の養蚕業や養蚕信仰について実際に歩いて丹念に調べていらした加藤さんのひとつの集大成として展示されています。

 


石﨑朝子『JCT(35°39ʼN – 139°21ʼE)』

会場:米店跡
ストリートのリアリティから出発した表現をテーマに、彫刻・映像・パフォーマンスを用いて制作活動を行う、彫刻を質感やリアリティから捉える石﨑さんは、中野地域周辺の産業と八王子自体の歴史のリサーチを起点に構成されたインスタレーションを展示。戦時中の金属類回収令で形を変えた歴史もある、八王子でかつて使われていた力織機の部品を複製し、織物産業を象徴する鋸屋根の工場群の形態と重ね合わせた彫刻を中心に構成しています。“回転”のイメージをヒントに八王子の歴史の記憶、景色を呼び起こす試みとして、彫刻だけでなく音や光も象徴的な作品を展示しています。街歩きをした後の夕方ごろの鑑賞がおすすめです。

内山翔二郎『旅人』『ある惑星の住人』

会場:米店跡、小宮公園
米店跡1階作品『旅人』
田坂八王子市中野山王町にある子安神社は湧き水の名所として有名で、中野上町の織物産業を支えた地下水脈が今もなお流れ続けています。一方で高尾山や小宮公園をはじめとした八王子の自然はさまざまな虫や草木や鳥たちを育み、生態系を創り出しています。本作品では、リサーチに訪れた中野山王子安神社の境内の湧き水に咲く菖蒲の花を端緒に、八王子の森林や街角に生息する虫や花をモチーフに、力強い生命力を表現しています。搬入に苦労した巨大生物に注目です。力強い作品と内山さんのやわらかな雰囲気のギャップも魅力です(笑)

 


高須賀活良『石の記憶 ̶ Memory of Stone』

会場:工場跡地

 

日本の伝統的な繊維文化と、現代の大量消費社会における「モノ」のあり方を比較した作品。植物繊維など、その土地の風土に根ざした素材を使って構成することで、現代社会における「自然」の営みや、モノが循環していくことの重要性を問いかけるインスタレーション(空間芸術)です。今回展示する衣服を石のように染め固めた作品は、モノの終わり方、終い方の提起する非常に新しい試みでとても面白い作品です。

 


堀田 千尋『迎える』

会場:工場跡地
田坂かつて八王子を代表した萩原製糸工場。後に片倉製糸紡績八王子製糸工場へ移行し、現在は日本機械工業として中野上町に当時の名残を残しています。その敷地内には小さな諏訪神社があり、大正時代から狛犬が大切にされてきました。作品は、かつてそこで働いていた若い工女さんの暮らしと手仕事を見守ってきたこの狛犬をモチーフに、黒と黄色に解かれたトラロープで丁寧に編み上げられています。実は全て手縫いでロープと糸だけで作っているんです。会場となる工場跡地で私たちを出迎えてくれる狛犬は、脇に立つ2本の桑の木を守っているようにも見えますね。

 


鈴木初音『クワコの家』

会場:工場跡
田坂八王子は古くから蚕とによって人々の生活が支えられ、自然環境と呼応した人と生命との関係性が連綿と続いています。本作品ではリサーチの際に日本機械工業で見つけた蚕の原種である「クワコ」をモチーフに、桑の木に寄り添っているクワコの精霊のような人物像が登場します。大きな絵画はミケランジェロで有名なシスティーナ礼拝堂の壁画と同じ古典的なフレスコと、引っ掻いて描くグラッフィートの混合技法で描かれています。使用している画材は、珠洲市で採取した貝殻を焼いた石灰や、下呂市の川で採取した砂、自身の畑で採れた菊芋や会場に生えていた桑の木の皮で作った紙など、旅先や生活の中で自然環境から得た材料を使用している点も重要なポイントです。

 


黒瀧 藍玖『Weft Roading』

会場:第九小学校前
経と緯の交差から生まれるテキスタイルの織構造と、八王子の工場や民家での人々の生活文化を再解釈した、立体彫刻によるインスタレーションを展示しています。「人間とは何か」、「存在とは何か」という問いから出発し、織物の構造をベースに立体へと展開する黒瀧さんの作品・見る角度で変わる、経糸と緯糸の中の「人間」と「繭」が旧工場の場所性と結びつきとても美しい。この会場は TATTAさんの改修プロジェクトの一環で形を変えている最中で、片倉製糸工場の木材の上を歩きながら鑑賞できる、時間軸を圧縮したような空間へと生まれ変わりました。。展示は17時までなのですが、実は陽が落ちてライトアップされた夜の時間はさらに幻想的なんですよね。

 


An Art User Conference『ジェネラル・ミュージアム|交通、サイン、∅』

会場:清川交通遊園
田坂An Art User Conferenceが実践する「ジェネラル・ミュージアム」は、「作品」だけでなく、「見ること」や「見方」をベースに世界のあらゆるものへ眼差しを注ぐプロジェクトです。今回の会場である清川交通公遊園では「道路」が既に展示されていると捉え、そこに複数の視点や文脈を交差させ、「交通、サイン、Φ」をテーマに展示しています。会場に行くと最初は作品がほとんど無いようにも見えるのですが、作品リストを片手に作品を探していくうちに、今僕たちが当たり前のように見ているコンクリートの街並みが実は一つの山が移動してできたものだと気づいたり、地球が丸いってことをよくよく考えていくと実は不可思議な状態に思えてきたり、当たり前から少しずれたような見方をすることで新しい気づきが生まれ、世の中のあらゆるものが展示物に見えてくる。そんな一見難解にも見えるけど読み込んでいくと面白い展示になっています。

 


坂田 桃歌『100年後、3匹の龍は藤の花の下であそんでいるのかな』

会場:石川東公園
田坂八王子市石川町には、古くから「七苗字七氏子(しちみょうじしちうじこ)」と呼ばれる伝承が残っていて、石川村の原型を作った七つの名字をもつ家々がそれぞれ別の氏神様を祀り、力を合わせて村おこしに励んだと伝えられています。本作品は坂田さんがこの言い伝えを手がかりに、名字や場所を変えながら人々が守り続けてきたお社を辿り歩いた現在の石川町の風景を10基の巨大なキャンバスに描いた作品です。会場の石川東公園の芝生には石川町の地図が描かれています。坂田さんが町の人から聞いたり見たりした出来事が音声ガイドとして会場で聞けるので、ぜひその語りを聞きながら作品を見て回って欲しいです。坂田さんが廻った石川町は徒歩圏内なので、鑑賞後に実際に歩いてみて作品に登場する景色やお社を見てみるとより作品の魅力に引き込まれると思います。ぜひ巡ってみてください。

 


ゲルオルタナ『公園は海』

会場:小門公園
田坂八王子を拠点に活動する栗原一成、小林丈人、田中良太が運営するオルタナティブスペース兼アーティストコレクティブの「ゲルオルタナ」。本作品は八王子市小門町にある小門公園を舞台に、小門町出身の小林丈人さんが子どもの頃に遊んでいたコンクリート遊具に絵を描いた作品です。公園は人々が常に移ろう海のようなものと捉えて、過去と現在と人々がたゆたう大海原のような作品になっています。約1ヶ月間公園で絵を描いているなかで、声をかけてくれた地元の方たちから聞いた公園や町の歴史だったり、子供たちの無邪気な笑い声などが作品を作るインスピレーションになったそうです。実はゲルオルタナは3年前に小門公園をテーマにした展覧会を開催していて、今回はその第二弾になっています。メイン会場でこの時に発行した小門公園をテーマにした書籍「コカドフォーマット」を販売しているので、ぜひ手にとってみてください。

 

八王子芸術祭2025は12/7(日)まで開催中。

詳細は八王子芸術祭公式ホームページへ!